「まだ、全部じゃない」
真坂と睨みあっていた久我が、ふいに綾菜を向いた。
「全部屋の暖炉は探したはずだよ」
改装前の地図をもとに、ひとつひとつ探していった。
もう探す場所などない。
「暖炉はほかにもある」
綾菜は小首を傾げた。
共用施設も含め、全く思いつかない。
「隼人、もしかして地下室を探すつもり?」
余裕の態度を消し、真坂が声を荒げる。
「地下室にも暖炉はあったはずだ。半崎が怯えていたから、あのときは調べられなかった」
地下室。
綾菜は考えもしなかった。あそこは恐怖体験の思い出しかない。
「きもだめしの最中に探そうと言われても、頷けなかったと思います……」
「オマエ、腰が抜けたからな」
地下室で行われたきもだめし。
恐怖のあまり腰が抜けてしまい、久我に背負われて部屋に戻ったことは、綾菜の忘れたい記憶のひとつだ。
