「琥珀、なあに?」
「いや……。見つけられなくて悪かったな」
「やだ。まだ気にしてくれていたの?」
気にしないでとあれほど言ったのに、義理堅いひとだ。
もともとダメ元の捜索だった。見つからなくても誰のせいでもない。
「見つかるほうが奇跡だもの。探してくれてホントにありがとう」
先日にあった消防点検の際、母のスクールリングを探す綾菜のために、各部屋への立ち入りが特別に許可された。
久我と御影、おまけに真坂も加わって、暖炉の大捜索。
目的のリングはなかったが、代わりに男の子にとってのお宝とやらがあちこちで発見され、寮は一時期お祭り騒ぎだった。
久我が強力に邪魔をするものだから、綾菜はいまだにその宝を見ていない。
「結果を残せなかったのに、礼を言うな」
ぷいとそっぽを向かれる。
お礼を言われて不機嫌になるなんて難しいひと。
「言うに決まっているじゃない。暖炉のある場所は全部探してもらったもの。もう、十分。琥珀、ありがとう」
ひとりなら、これほど早く確かめることはできなかった。
みんなにはこころから感謝している。
寂しい気持ちはあるけれど、もう諦めるしかない。
