「……ない、です」
綾菜は即座に白旗をあげた。
「用が終わったなら、帰るぞ」
久我は顎をしゃくった。
「綾菜、待て」
素直に従おうとしたのを止めたのは御影。
「まだ、あるのか? しつこいな」
綾菜の代わりに勝手に久我が返事をする。
「俺は綾菜に用がある。久我、お前は関係ない」
「なに?」
睨みあう久我と御影。
「ふ、二人とも……」
綾菜はどちらに声をかけていいかわからず狼狽えた。
いわゆる、板挟み状態。
「こらこら。隼人はいつも綾菜ちゃんを独り占めしているんだから、たまには遠慮してもいいんじゃない?」
「遠慮するのはオマエたちのほうだろう? こいつに構うな」
助けようとしてか、さらに煽ろうとしてかはわからないけれど、とにかく久我の矛先は真坂に向かった。
これで御影と話せる。
