「事情を知りたいとは思わなかったのか?」
「……秘密は、秘密となった瞬間から、いつか明らかになる運命を背負うんです」
自分のルーツが不安定なことに戸惑った時期は綾菜にもあった。
乗りこえられたのは、やはりルームメートの存在があったから。
「明かされた秘密はこころを癒す。暴いた秘密はこころを傷つける。だったら、暴くより明かされるのを待つほうがずっと得」
「……半崎」
「ジュニア時代にルームメートだった友人の受け売りです」
明かされない秘密を、あえて暴く必要はない。
部屋の暖炉から見つかった四つのリングは、ボックスに入れてもう一度暖炉へと戻した。
いつか秘密を明かしたくなったとき、持ち主がきっと探しにくる。
願わくば、母のように後悔を残したままにならないことを、綾菜はただ祈った。
「いいルームメートだったんだな」
「久我さんもいいルームメートですよ。なんといっても、一緒にいるとお化けが寄ってきません」
綾菜は久我の肩口に顔を押しつけた。
ここならぐっすり眠れる。
「ったく、安心した顔しやがって。……いいルームメートでいるには、かなりの忍耐がいるってわかっているのか?」
即座に寝息をたてはじめる綾菜。
そのこめかみに、久我はそっと唇をおとした。
