「なら、俺が被虐嗜好なのかもな。手をだせないとわかっていて、触れずにいられなくなる」
首の後ろに久我の腕が入れられた。そのまま肩を抱かれ引きよせられる。
「これ、腕枕ですよね」
「そう。嫌か?」
「気持ちがいいです。すごく安心できて、お化けも怖くなくなりそう」
目を閉じてもおどろおどろしい映像が浮かばない。
うれしくて、綾菜はさらに身を寄せた。
「ったく、少しは警戒しろっつーの。だいたい、オマエは怖がりすぎるんだよ。幽霊とかの怖がり方は半端じゃないよな」
「母のせいです」
即答。
自分の性格や行動の原因を誰かにおしつけるつもりはない。だが、怖がりになったことについてだけは別。
「母親の?」
「ホラー映画がすっごく好きだったんです。私、子どもアニメの代わりにホラー映画を観て育ちました」
十年前までの主だったホラー映画は、モノクロ時代のものを含めてほとんど制覇させられた。
妊娠中も頻繁に観ていたと言っていたから、恐怖映画の音は胎教として聞いていたことになる。
怖がりになったとしても、誰が綾菜を責められようか。
