「俺はオマエの常識を疑う」
結局、折れたのは久我だった。
――久我は綾菜を床で寝させたくない。
――綾菜は久我を床で寝させたくない。
両者の希望に沿う完璧な解決法だ。
「私、久我さんなら気絶しないので大丈夫ですよ」
「そういう問題じゃないだろ……」
向かいあう形で横になった。
久我の体温を感じていると、幽霊やお化けへの恐怖感が薄らいでいく。
「ごめんなさい。男のひとと一緒に眠るのがマナー違反なのは私だって知っているんですよ」
綾菜とて、一応は年齢を重ねた程度に世間の常識を身につけている。
男のひとと一緒にベッドに入ることに、リスクを伴うことくらいはわかる。
「知っててやるのかよ」
「久我さんなら安全なので、いいかなと……痛たたたた」
言い終えないうちに、ほっぺたをむぎゅっと引っぱられた。
「俺が安全? どの口がそんなことを言っている?」
「久我さんが優しいっていうのもありますけど、入寮のときに琥珀も言っていましたし」
綾菜は御影が言ったことをきちんと覚えている。
「御影がオマエになにを吹きこんだ?」
