綾菜はベッドから這いでると、周囲を仕切っているカーテンをそっとめくった。

「ずるい。自分はカーテンをひいていない」

 対面では、久我がこちらを向いて眠っている。

 ベッド周囲のカーテンをひいて眠るように、いつも口を酸っぱくして言うくせに自分は守っていなかったのか。

 いつも久我より先に寝て、後に起きていたから全く気づかなかった。

「でも、かえってよかったかも」

 カーテンをめくって侵入するのは、さすがに悪いかなと思っていた。

 けれど、ひいていないなら遠慮する必要はない。

 右手に枕を抱え、左手で毛布を引きずりながら、綾菜は、対面のベッドへと歩みを進めた。

「おやすみなさい」

 端正な横顔に声をかける。

 綾菜はベッド下のラグに枕を置き、横になった。