「俺にここまでさせて、もし選ばないようなら、今度こそ一生部屋に閉じこめるところだ」

 言うことは過激なのに、顔に浮かぶのは優しい笑み。

 さっきまでの緊張が解けていくのがわかる。

「久我さん、よろしくお願いします」

 綾菜は少しはにかんで、久我に手を差しだした。

「そうだ、綾菜ちゃん。聞いてもいい?」

 真坂が声をかけてきた。

「なあに?」

「僕が変態美女。琥珀は意地悪眼鏡。……じゃあ、隼人は?」

 長い緊張で神経をすり減らした綾菜に、正しい判断力は残っていなかった。

 世の中には言っていいことと悪いことがある。

「決まっているじゃない。もちろん、魔王よ」

 目の前で久我の笑顔がパラパラと剥がれおちていく。

「綾菜、アンタはホントにバカ……」

 隣で理佳がこめかみを押さえていた。