「ったく、オマエ、限界が早すぎなんだよ」
耳元の声で苦笑しているのがわかる。
許してくれる気になったみたいだ。
「久我さん」
「なんだ?」
「初めてできた男友達なの。二人の話を聞くのは嫌い? それとも、私が友達の話をするのが前から嫌だった?」
クラスの友達。寮での友達。イギリスにいる友達。
綾菜はしょっちゅう久我に友達の話をしている。理佳についてなどは、同じ話を最低三度はしているはずだ。
迷惑だったなら、とても悪いことをした。
「オマエは、見当違いばっかりだよな」
「見当違い?」
わからずに首を傾げていると、くしゃっと髪を撫でられた。
「オマエが友達の話をする姿は、気にいっている」
「私も、久我さんに聞いてもらうの、好きです」
相づちを打つわけでも、話に乗ってくるわけでもないけれど、聞いてくれているのが自然と伝わる。
これからも、話していいんだと思うと顔が綻んだ。
「なら、琥珀と純也くん、じゃなくて御影くんと真坂くんのことは……」
言いかけて、慌てて名字で直した。
鈍い綾菜でも、二人を下の名前で呼んだ直後に魔王が降臨したことはわかっている。
