「いつから、名前で呼びあうようになった?」
久我の声が、一段低くなったことに綾菜は全く気づいていない。
「最近です。私、男の子を名前で呼ぶのは初めてで、ちょっと新鮮」
照れてしまい、頬が少し赤くなる。
背中をベッドに預けた状態では、久我のこめかみがピクピク動いていることなど当然わかるはずもなく――。
「しつけが足りないのか?」
「きゃっ」
突然、身体が宙に浮きあがる。
気づくと、ベッドの上に座らされていた。
腕が腰に回されている上に、久我の長い足で、身体をしっかり挟まれて逃れられない。
「俺の前でよくも平気で、男の名前を連呼できるな」
この艶っぽい話し方。
いつの間に魔王が降臨していたのだろう。
十分あった予兆を、察知など当然できていない綾菜はただ驚くしかなかった。
「男の名前って、琥珀と純也くんは……」
「もう黙れ」
