「あたしね、王子に会ったとき
これが“恋のフーガ”だっておもったんだ」


姫がぽつりと話し始める。


「だって…だって…

涼香(スズカ)ちゃんが

“王子様なんていない”って

いうんだもん…」


「涼香ちゃん?」


「おんなじクラスのおともだち。

“恋のフーガ”でティンパニたたいてた。」


あー、“ジャイコ”か。

あいつ案外的を得てるな。


池田の歌がBGMとなり
これが本当の男女の中だったら
良いムードを引き起こす。

姫はうるっとした目で俺を見る。


「おうじ…

あたしの“王子様”になってくれる?」


「あー、いいよ」


なるぐらいなら。


パァっと姫の顔が明るくなる。

この顔見たら池田は喜ぶだろうなぁ。

残念ながら姫は池田には背を向けているけど。