立ち止まった青年は両目を閉じる。急に闇が訪れ、辺りから音が消える。
 〔問う。汝の今回の目的はなんだ。〕
 何度自分にこの質問をしてきただろう。青年は目を閉じたまま、胸の内で答える。
――放浪公爵の製造した"悪夢"を破壊し、歴史を元に戻すこと。
 〔問う。汝は何者だ。〕
――"返更教団 第五修正班"の一人。
 〔問う。返更教団とは何か。〕
――歴史を元へと返し、何事も無かったかのようにする団体。
 〔問う。"修正班"とはどうあるべきか。〕
――情を移さず、流されず歴史を正すことを第一に考えるべき。
 〔今一度問う。汝は何者だ。〕
――"返更教団 第五修正班"の一員。
――名は――アーク・ディオン。
 彼――アークは自分に言い聞かせ、活動を始めた。

「その噂、本当か?」
 帯剣型のネックレスが特徴的な青年――アークが街の通行人に問いかける。
「本当さ。ごく最近、森の広場の銅像前で人々が祈りに行くんだけど、そこで人が帰ってこなくなるんだとよ」
「その人達の共通点とかないの?」
「さあね。行く人とかばらばらだし」
 通行人はそう言い残すと去っていった。アークは怪訝そうな顔をしながら考える。
――人がいなくなる、か・・・まさか"悪夢"が。