小さく手を振って、彼女は踵を返しゲートへと向かう。 まったく… 今ばかりは彼女の賢さを少し呪った。 彼女の温もりを手放した今、俺にはもうここにいる用はない。 せめて、未練がましいかもしれないが、煙草の一本ぐらい吸ってから帰ることは許されるだろうか。 ほんの少し前に駆け込んだ空港の入り口に喫煙スペースがあったはずだ。 俺は彼女の後ろ姿が見えるうちに元来た道を歩き始めた。 ポケットの中で煙草の箱を弄びながら。 end