「先生。好き」 周りの雑踏を、すべてかき消すくらいの言葉だった。 「あの頃から、たぶんずっと好きだった」 「あの頃って…」 「言ったじゃない。先生の授業聞きながら、考えてたって」 ようやくいつもの彼女の、真意の読めない悪戯めいた微笑みが戻った。 ただ今日だけは、真意はそこにあったけれど。