「今の、高梨ですよね?陸上部の」 彼女が持ってきた課題を添削しようと一ページ目を開いたところで、真前の席の津野先生が話し掛けてきた。 「ああ、はい。」 日本史担当の津野先生は、とかく話が長い。 早々に切り上げようと極力短めに答えた。 「脚も速けりゃ頭も良いとは、神様は不公平ですなあ」 一人頷きながらしみじみと語る先生に、俺は曖昧な笑みで答えた。