「23時くらいかな」 俺も、彼女を名字以外の呼び方で呼んだことはない。 俺の返答に頷き、彼女は滑らかな動作でワイングラスを空にした。 アルコールに強いところも、彼女らしい気がして、俺は密かに気に入っている。 店を出ると、車で彼女のマンションに向かった。 月も星もなく、やけに静かな夜だった。