『別れよう。』



その瞬間から真美が変わった

というわけではなかった。


「理由が知りたかったの。」


真美の性格上、知らずに別れるなんて
絶対できなかったと思う。


でも、


「…知らなければよかった…」


こんな真美を見るのは初めて。


メールを見てすぐに、
卓郎に電話したんだって。


卓郎は3コールもしないうちに電話に出て、

冗談だったのかもって少しの期待が湧いた。


「もしもし?真美?」

「もしもし?卓郎?…」


いつの間にか2人の間には

このフレーズが定着してて、


まだ普通のカレカノって感じで

メールが夢だったって
錯覚させたんだって。


でも、あのメールの理由を
教えてはくれなかった。


いつものように話して、
終わり。


本当に別れたのかな?って
思うくらい2人とも自然な口調で。


でも、電話の向こうから
聞こえてきた。


「誰と話してるの?」

「元カノ?」


その声の主が卓郎にとって
どういう存在なのか何となく
わかってはいたけど、

聞かないほうがいいと思った。


聞いたら自分が

負けてしまうような気がして。


好きだけど、嫌い。

嫌いだけど、好き。


そのときの真美の心境は、

そんな感じだったんだって。


でも…


嫌う理由は本当はなかったんだ。