「その…満井サンは、なんで気づいたんですか?」
しばらくの沈黙を破ったのは幸崎だった。
正直ぎっくりした。
お前のことをみてたから、なんて言えへんやろ?
きっとまったくの脈なしや。
もう何度も自転車に乗せてるけど、俺に掴まったことなんてないしな。
先輩に掴まっとるとこは見たことある。
なんて考えながら答えあぐねていると、ふっと背中に重みと、体温を感じた。
「え…。」
ゆったりとまわされた手は俺の腹の前で組まれる。
「ちょ…マネさん、なんやの…?」
状況が飲み込めない。
「満井サンはどんな女の子が好きですか?」
「はぁ?!なんやの…マジで急に…」
「まぁ、この際なんで、腹わって話しましょうよ、」
今更なにいったらえぇっちゅーねん。
拷問もいいとこやぞ。
「……。いつも一生懸命な奴。ちょっとぬけてるけど、優しくて、明るい…奴かな。」
「…満井サンも好きな人いるんですね、」
「…さあな。」
「自分の恋は…かなわないんです。」
「はぁ?」
なにゆうてん、こいつ。
もう叶っとんのも同然やないのアレ。
でも、俺の頭を一瞬過ぎった意地悪な考え。
これ、頑張れば引きはがせるんとちゃう?
くだらない。
そんなことしてコイツが傷つくほうが辛いやん。
「案外……もう、かなっとるんと違う?」
背中を押してやんのが、俺の役目なんやろ?
もしいるとしたら…残忍やな、神様って。

