「まだ、目を醒ましてはいませんね」
「「は?」」
「どうして……!?絶対に莢の指は動いたのに!!」
医者の放った一言に俺と司は呆然と立ち尽くす。
この目で見たのに。まるで声に反応するかのように微かに動いた指先を。
「動いたのは身体が痙攣したからでしょう。……ほら、足の親指の爪を強く圧しても反応が無い。意識がある者は少なからず反応があるはずなんだ」
「そ、んな……」
「何でなんだ……」
どうしてだろうか。
莢が目覚めないのは何年も変わらない、変わらないのに!!
……それなのに、心にぽっかりと穴が空いたようだ。
「なんか……期待した分、淋しいな」
ああ……
そういうことなのか。
莢が目を醒ますなんてそれこそ奇跡でも起きなければ無理だというのに。
俺たちはその奇跡に光を見てしまったのか。
「くそっ!!」
やはり何も出来ない。
なんて非力で、なんて無力なのだろうか。
大切な幼なじみ1人起こすことも出来ないなんて───…


