五里霧中




「……もう誰かが死ぬのはいやだよ……

私のせいで、誰かが死ぬのは見たくない……」


気がつくと私は、静かな境内の前で泣いていた。


ここがどこなのかもわからない。


ただわかるのは、カインが危ないってことだけ。



「誰か……誰か助けて。お兄ちゃんを助けて!」


声を張り上げて叫ぶ。


喉がつぶれてもいいと思った。


カインが助かるのなら、声なんていらないと思った。