五里霧中



「……らないよ」


「えぇ?」


「……知らないよ、そんなこと」


ポケットから小さなバタフライナイフを取り出し、しっかりと握る。


「……邪魔とか、あの人とか、俺は知らないからさ。死ぬ筋合いもないんじゃないかと思って」


「はぁ?何言ってんのぉ?筋合いならあるじゃない。だって、」


俺の殺意を感じ取ったのか、ソイツは獰猛に笑い、包丁を素早く構えた。


「あの人は、あなたたちのせいで私を迎えに来れないんだから」



女が地面を蹴ったと同時に、その手に握られた包丁が突き出される。


それをうまくかわし距離を取ると、俺は一瞬で距離を縮め、ソイツの脇腹目がけてナイフを突き立てた。