遠距離恋愛:side 悠


『だ、大丈夫だ…よ。』

「ホントに?寂しくない?」

改札の前にいる奈瑠の肩が小さく震えていた。

もう、ダメだった。
自分で仕掛けたことなのに見てられなかった。
この泣きそうな仕草が、たとえ演技だったとしても、どうでもいい。

俺は一生奈瑠には、敵わないんだろう。
というか、敵わなくてもいいや。

『……う、ん。』

俺を安心させようとして言ったその言葉を聞き終わるか、終わらないかのうちに俺は奈瑠を後ろから抱きしめた。
久しぶりの感覚に腕が震える。

俺の腕が震えてるのに気付かれたくなくて、嘘つき、と耳元で囁く。

ビクっと一瞬奈瑠の肩が強張った。
でも、その声で俺と分かった奈瑠が、彼女の前で組んだ俺の腕を掴んで俺の方に振り返った。

「…ばかっ!…もう、本当に寂しかっ」

そんなことを潤んだ瞳で、しかも上目遣いで言われたら…

自分が曲がりなりにも芸能人だとか、今いる場所が駅だなんて知らないふりで、周りなんて気にする余裕なんてなくて。

その言葉の途中で、俺は奈瑠にキスをした。

ぎこちなく俺の背中に回された腕から伝わる温もりに、どうしようもなく満たされる俺がいた。

思わず溢れる。


「愛してる。」