意外と早足だった彼に一生懸命ついて歩くこと数分。
ようやく止まった場所。
「教会ってこれ?」
「そう」
へぇー…。
「入んの?」
「うん」
入っていいんだ。
知らなかったー。
誰かのおうちかと思ってたよ。
「……パリに来たら、ここで演りたかった」
楓という彼はそう呟いて、楽器をケースから出した。
「なにやるの?」
「ブラームス」
ブラームス?
そういうの好むんだ。
なんかバッハとかのイメージ。…に見える。
「まおもやっていい?」
「ああ」
返事もろくに待たず、いそいそと楽器を取り出した。
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