一日家族以外と喋らないで過ごすこともざらだった元・地味な俺にとって、
中学時代、女子は異世界の生き物として存在していた故に、
なぜ下手くそなお化粧をするのか、なぜ集団で意地悪をするのか、なぜ恋愛が絡むと豹変するのか、さっぱり分からなかった。
しかし、高校生になり人を好きになる意味を知った俺は、彼女らの感情が一割は理解できてきたように思う。
田上結衣がお勧めする親友の小崎里緒菜が優しく笑いかけてきたから、話を合わせて適当に相槌を打つことにした。
「お似合いだよねー」と、例のカップルへと視線を注ぐ――どうも苦手だ。
彼女が読む幸せの国の王子様とお姫様の童話は、いつも俺にとっては残酷だから条件反射で気分が落ちてしまう。



