好きだった。
田上結衣が好きだった。
外見が変わろうが変わるまいが優しく接してくれるのは、田上結衣だけだった。
二年半も片思いをしていた。二回も振られた。
もう大袈裟に言うなら、近藤洋平よりもあの子を愛していた。
運動場には部活に励む生徒が溢れている。
高く飛ぶボールや声援、懸命に走る一年生、その奥には二人乗りをして下校をする恋人が描かれた風景画は何よりも価値があるはずだ。
好きだった、本当に。
俺の青春はあの子そのものだった、永遠に。
「ラブラブカップル、あれ逆にうざいと思いませんか?」
左肩を叩かれ振り返ればなぜか恋心が揺らいだ。
そうして前向きな視界がたちまち奇妙な色に染まってしまっていく――――



