嫉妬と敗北感だけで目を閉じると甘い夢に溺れることはできた。
何よりも田上結衣が好きだった、その気持ちさえあれば三十秒後には幸せの始まりだった。
自分の下に居る存在にひどく価値を感じ、
授業中にうたた寝をする長い髪を想い指に絡めたり、笑った時に柔らかに膨らむ頬を頭に浮かべ唇を寄せたり、
小崎里緒菜が見せてくれたプリクラで着ていたストライプ柄のワンピースを思い出して服を脱がしたり、
そうやって生きた記憶をかき集め、ただただ好きな子の世界に手を染めた。
その時の俺は近藤洋平ではなく、自分が田上結衣にたくさん愛を囁いてやったのだと優越感に似た悦に浸れていたように思う。



