「あら、起きたの?」

テレビに視線を向けたまま、杏夜が聞いてきた。

「そりゃ、学校があるからな。

杏夜こそ、仕事は?」

蒲生が聞くと、
「今日は午後から」

視線はテレビに向けられたまま、彼女から答えが返ってきた。

テーブルに視線を向けると、朝食が用意されていた。

蒲生は椅子に座ると、朝食を食べた。

会話はない。

聞こえるのは、テレビの音だけだった。

いつからこうなってしまったのだろうと、蒲生は思った。