「おーい、始まるぞー」

リビングから永田が呼んだ。

「はーい、ただいまー」

光はマグカップを2つ持って、永田のいるリビングへと足を向かわせた。

黒のマグカップと黄色のマグカップ――色違いのそれは、恋人同士になった記念に2人で買った大事なものだ。

「はい、先生」

永田に黒のマグカップを渡したら、
「先生じゃないだろ?」

顔を覗き込まれたと思ったら、そう言われた。

先生じゃない。

もちろん、意味はわかっている。

光は真っ赤になりそうな顔を感じながら、
「――敦…」
と、言った。