「もう1度、同じとこ!」

「はい!」

普段はあまり大きな声を出さないため、すでに自分の声が枯れ始めているのがわかった。

けど、練習は続く。

「もう1度!」

「はい!」

残暑が厳しい夕暮れ時、練習が早く終わることを誰よりも願うルイだった。


遠回りしてでもいいから、違うルートで行けばよかった。

そもそも、予約した本を取りに行こうと思わなければ。

「ちょっと駅前に用があるから」

そう言った自分を、
「じゃあ、我々は先に帰っていますね」

光と永田が見送った。