蒲生は、ゆっくりと顔を近づけた。

唇が重なったその瞬間、周りの音が消えたような気がした。

蒲生は目を閉じて、莉緒の唇の温かさを感じた。


花火大会が終わった帰り道。

「結局きませんでしたね、蒲生先生」

「いや、きてるかも知れないぞ。

何せ人が多かったからな。

簡単には見つからまい」

「だといいですけど」

永田とそんなことを話しながら一緒の家へ帰る。

夏は後少しで終わりを迎える。

光は少しだけ、永田との距離をあけた。