花火があがる。

花を咲かせては、静かに消える。

蒲生と莉緒は何も言わず、黙って見つめていた。

一瞬一瞬を逃さないように。

莉緒の体温を腕に感じながら、ただ見つめていた。

いつまでも、この時間が続けばいいのに。

そっと莉緒の方に視線を動かすと、彼女と目があった。

それも、至近距離で。

「莉緒」

莉緒にしか聞こえない声で、名前を呼んだ。

彼女に向かって手を伸ばすと、頬に触れた。

柔らかい。

莉緒がそっと目を閉じる。