その日の放課後、ぼくは図書室で数式に手間取って、夕暮れどきまで学校にいた。

そして、ようやく帰ろうと、和尚のいるB組の教室を通りかけたときだった。



開いたドアから何気なく中を見ると、そこにただ一人、和尚がぽつんと後ろ向きで座っていたので、ぼくはびっくりしてしまった。



和尚の大きな背中は、薄暗い教室のなかで、丸く小さくなっている。
ここまで落胆の色をにじませた彼を見るのは、ぼくは初めてだった。


和尚は、こんな時間に誰かがここを通り過ぎるとは、予測していなかったに違いない。
彼の傍らには、二つに引き裂かれたなにかの紙があった。
ぼくは、なんだろうと思って、少し角度を変えて様子を見た。

驚いたことに和尚は泣いていた。



あまりにびっくりして、ぼくは思わず、「おい和尚…、」と声をかけかけた。