「ふうん」
と言って、結花はそのへんのものをちらちらと見ていた。

「どうしたの。落ち着きがないね」

「だって。翔ちゃんがどこへ行くのか気になって」

「今日は一緒に行けないよ」

「どうして?どこへ行くのかだけでも教えて?」

そこへ、母が紅茶とケーキを持って、部屋に入ってきた。
「結花ちゃん、食べていってね。このケーキ、頂き物だけどすごく美味しいのよ」
結花ははい、と言いながらも、床に座ろうとしなかった。


ぼくはそのとき、なんとなく結花は、今日が和尚との別れの日だと知っているんじゃないかという気がした。