私はそこはかとなく悔しい。

今更何を喚こうが全くの意味を成さないのだが喚かずにはいられない。
しかし喚くと言っても髪を振り乱し声を荒げるようなことはしない。心の中で眉間に皺を寄せて文句を言うだけだ。
何故ならば私が喚き散らしてやりたい相手は自分自身だからである。意気地無しの馬鹿な及川遥という人間だからである。

確かに今回私がこんなにも惨めな思いをする羽目になったのは他人からの悪意を受けたからである。
しかし、もし私に本当の勇気と言うものがあったのならば振り払うことの出来た悪意だったと私は思っている。

何故だろう。何故私は何も言えなかったのだろう。何故あの時道を譲ってしまったのだろう。何故引き下がってしまったのだろう。
やり場のない後悔と怒りと悲しみとその他言葉では表すことの出来ない感情が私の中で渦を巻く。

そしてそれをゆっくりと心で噛み砕いて飲み込んだ後に私は決意した。

二度と他人に笑顔を向けないと。