江坂奏は、さっきからの私の不審な行動に口元をひきつらせる。
そしてすぐに何か閃いたような顔になった。
「あ、そうか。姫野さん、トイレ行きたいんでしょ?
成る程、だから挙動不審だったんだ」
「……」
何を勘違いしたのか、私がトイレを我慢しているように見えるらしい。
まあ、それはいいとしよう。
だけどこれだけは言いたい。
挙動不審とか本人に言うか普通。
それに、一応女の子である私に対してトイレというワードを出すこと自体あり得ない。
わざとなのか、それとも空気が読めないだけなのか。
私はどうしてこの人が人気者なのかよくわからない。
やっぱり顔なの?
今時の女子は顔が良ければいいって発想なのか?
…なんかわからないけどむかつく。
脳内ツッコミと、ほんの少しの怒りで顔を熱くさせた私を見て、何かを悟った江坂奏は慌てて口を開いた。
「ああ!
ヤバい?漏れちゃう?それじゃあ、さっさと本題に入るよ。お願いっていうのはさ「オコトワリシマス」
私は丁寧な片言言葉で素早く断った。
彼は私に逃げ出す隙を与えたことには気づいていないだろう。
そして改めて再確認した。
どうしてこんな人が人気者なのだろうかと。
「ちょ、俺まだなんも言って「ゴメンネ!ワタシお漏らししちゃうカラ、帰るカラ」
私は速急に断って、走ってその場を去った。
「あ、ちょっと!ってか、ツッコミ所満載だから!」
呼び止める声を軽く受け流し私は教室をあとにした。


