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「亜莉子ちゃんホント素敵ー」
「あの、これは一体どういう」
「だって、ここでバイトしてくれるんでしょ?」
バイト?
私は話を聞くために此処へ来たはず。
なのに、何故アルバイトをすることになっているんだろう。
まさか、江坂奏の言う『お願い』とはアルバイトをしてほしいっていうことなのかな?
私は丁度姿鏡がすぐ近くにあることに気付いた。
鏡に映る自分の姿をぼんやりと眺める。
そこにはショートヘアのウィッグと学ランを来た自分。
いわゆる男装と呼ばれるものだ。
あの後お姉様に着せられた。
そりゃ着替えるんだから男子禁制なはずだ。
しかし、話とバイトとこの姿には一体なんの関係があるんだろうか。
「あれ?亜莉子ちゃん奏から話聞いてないの?」
あまりにも反応が薄かったのか、訝しげな顔でお姉様が聞いてきた。
聞くもなにも。
「話す前に姫野さんに逃げられたからね」
私の気持ちを代弁した江坂奏は座っていたソファから立ち上がり軽く伸びをする。
そして私に向き直る。
「それじゃ、単刀直入に言うけど」
「はい」
反射的に背筋を伸ばす。
「姉さんが話した通り、姫野さんにはバイトをしてもらいたいんだ」
「絶対に嫌ですやりません」
それこそ面倒くさいに決まっている。
しかし、江坂奏は余裕そうな顔で笑った。
「うん。だからどんなバイトなのか話だけでも聞いてってよ。折角来たんだし」
「話を聞いても私の意見は変わらないと思うけど」
「聞くだけだし、ね?」
どうもその笑顔が怪しい。
何か企んでいそうだ。


