私がそんなに酷い顔をしていたのか、江坂奏が苦い声を出した。


「ほら、姉さんがあまりにもボロを出すから姫野さんが凄く残念そう…いや、可哀想な目で見てる」


「ちょっと、可哀想ってどういうことよ!あんたの解釈は間違ってんのよ、ほらこんなに親しみのある眼差しじゃない。ね、亜莉子ちゃん」

私はさっと目を逸らした。


「えええー…ありすちゃーん…」



嘆いているお姉様をよそに、江坂奏の方を見た。

いつの間にか手錠が外れていて自由になった右手。


「さっさと本題に入って早く帰らせて」

もう腕にあった鎖は消えた。

だから、いつでも抜け出せる。

どんなことを言われても、今なら捕まらずにいられるかもしれない。


それなら、さっさと話を聞きたい。

そんな気分になった。

「まあ、そう焦らずに」


「そうよーゆっくりしてって」


この姉弟はさっきまで私をからかっていたというのにくつろいでいけと?


無茶振りにも程がある。


「あの、早く帰りたいんです」


「そう言わずに。とりあえず、亜莉子ちゃんはあたしと一緒に来て」


お姉様は微笑むと私の腕を取った。


「え、私だけ?」


動かない江坂奏を見て不意に呟く。


「そうよ。男の子とは別行動。奏はリビングにいてね」


「了解」


遠ざかる江坂奏の横顔を眺めながら、話を聞くのにどうして別行動なの?と不思議に思った。



そんな疑問もつかの間で、さっきの状態に至るのだ。