その雑誌は至って普通だ。
特別大きいわけでもなく、ページ数は寧ろ少ないぐらいだ。
しかもカラーページは表紙と背表紙のみ。
他誌と同等、もしくはそれ以下のクオリティーなのに、何故4500円(税別)もするのか。
こんなの詐欺だ!!
私は潔く雑誌を棚に戻した。
今の私には、いや、未来の私にも買えたもんじゃない。
また今度立ち読みにこよう、と思いその場を去ろうとした時だった。
「お、ラッキー!
もうこれ発売してたんだー」
聞こえた声と同時に後ろからふっと手が伸び、さっきまで私が持っていたものを手にした。
こんなぼったくりのような雑誌を買う人がいるとは!
振り向きたい衝動に駆られるが、押し留まる。
この声は男だ。
男が苦手な私としてはあまり関わりたくない。
それに、なんだか嫌な予感がする。
私はさりげなく横にズレようとした。
しかし、その行動は遮られた。
ゆっくりと右下を見ると、私の手を掴むもう一つの手がある。
直後、私は凍りついたように固まった。
「あ、やっぱ姫野さんじゃん。
姫野さん、あからさまに俺のこと避けるから、これからどうしようかと思ってたとこなんだ。
こないだの話の続き、勿論聞いてくれるよね?」


