すると男ぶるぶると震えだし、

やがて氷に包まれて、静かに…

  絶命したのです。

私が、我に帰った時には、

もう手遅れだった…。

君は私の後ろに居て、静かに…

私を見つめていた。

振り返ると君はいつものように

私に優しく、微笑みかけてくれました…。

その時は本当に嬉しかった。


次の日の朝、私が目覚めると、君の姿は

どこにもありませんでした…。

その時、私はすぐに気が付きました。

『君は逃げた』のだと。

この妖怪の巣から…

恐れをなして…。

それは

身の毛もよだつ光景だったでしょう…

君の目の前で男がだんだん凍ってゆく様は。

私という物体は『人を愛せない。』

だって私は…雪女なのですから…。

雪女は気に入った男を氷づけにし…

山へ持ち帰る。

それが掟なのです。

だけど私は君という人間に出会って

思ったのです。

『人を愛することは、自分を愛する事』

なのだと。

掟にそむけばどんな罰が下るか分からない。

だけど私は君と過ごす毎日がとても

かけがえの無いものに思えた…。

君を氷付けにする事なんて、

出来るはずが無いのです…。