裸に纏ったシーツをぎゅっと手繰り寄せると、そこにはもう彼は居なかった。


かわりに枕元の小さなテーブルには一枚のメモ。


『すまん。先に出るよ。』


彼は決まって朝方、私より先にホテルを出る。

朝方…と言っても、実際はいつ出たのかわからない。

あたしが目を覚ますのは6時。

その時にはもう彼はいないから。

一度、聞いしまおうと思ったけれど、それを聞いたからといって彼と過ごす時間が延びるとは限らない…と、ふと冷静になってしまった。

今では、
朝方まで仕事が終わらず午前様、と言い訳をしているんだろうなどと勝手に解釈している。

そうしなければおかしくなりそうだった。

グルグルと渦に飲み込まれていってしまいそうな自分が怖かった。

夢中になればなるほど、あたしの中の女がどんどん膨張していき、このまま別れてしまうのではないかと、真剣に悩んだ時期もあった。


彼と過ごして三年ちょっと。

【扱い難い女】
から、

【別れるのが惜しい女】
になる事を決めた。