カーテンをスライドさせると日差しが僕の身体を包み込んだ。窓の外に目を向けると、まだ見馴れない制服を着ている亜美が此方に向けて手を振っている。

時計に目を向けると青い蛍光色のデジタル時計は7時10分を示していた。僕は1ヶ月前に美島高校の一年生になった。新しい制服に袖を通して僕は自分の部屋から出た。

一階に降りると母親の中邑美千代が布で包まれている長方形の弁当箱を渡しに来た。

「号、はい、お弁当」

母親の美千代は年の割りには若く見える。夕食の材料を買い出しに行くとよく二十代に間違えられると夕食の時に自慢げに話すぐらいだ。僕は弁当箱を受けとると玄関に座り靴を履きドワノブに手をかけた。

すると、後ろに立っている美千代が頬に笑窪を作りながら僕の肩に手を置いた。
「ハニーが外で待ってるわよ」

僕は無表情で母親の美千代の手を振りほどき外へと向かった。ドアを閉める瞬間に美千代の声が聞こえた。

「つれないなぁ〜」

ドアの閉まる音と美千代の声が重なった。外に出ると目の前には九条亜美がコンクリートの壁に身体を預けるようにもたれ掛かっている。

「あ、号君おはよう。早くしないと遅刻しちゃうよ」

九条亜美は僕の幼馴染みで密かに僕に恋心を抱いているらしいがどうでもいい事だ。僕は人に執着しない、しかし、僕にも執着するものがある。それは『死』という美学だ。

二年前に家族旅行で山梨県富士河口湖町に三泊した時のことだ。その頃、僕は中学生だったので親が寝静まったのを見計らって青木ヶ原樹海(富士の樹海)の近辺を歩いた。

ある目的のために。