しかしどうして、うちの学校の屋上は立ち入り禁止なのだろう。

俺はそんなことを考えながら、屋上の扉の前に立っていた。

危ないのであれば柵を作れば良いし、それが出来ないのなら、最初から屋上なんて作らなければ良かったのだ。

そこにあるのに、入ってはいけないなんて、おかしなことである。

矛盾しているなぁと思いながらも、俺はようやく制服のポケットから屋上の鍵を取り出した。

鍵穴に差し込んでそのまま右にねじると、がちゃんという小気味よい音がして鍵が開いた。

これはいわゆる、合い鍵というやつである。

もちろん学校には内緒だし、ばれたら大変なことになるのだろうが、
しかしこれを作ったのは俺ではないので、いざとなったら当然、責任逃れをするつもりでいた。
(俺はよく性格が悪いと言われるが、そのことについては自覚済だ。)

そしてこの鍵を作った当人はというと、すでに屋上で横になっていた。

俺を待っているのかと思いきや、近づくと寝ているだけだった。

俺は、寝ている彼の隣にしゃがみこんで、

「起きろ」

パシンと頭をたたく。

赤茶色に染まった髪が、さらりと揺れた。





琢磨御李は、まだ高校に入学して間もないというのに、
少しばかりか名の知れた存在になっていた。

背は180近くある長身で、体躯は細身、容姿は端麗。

基本的にバカなので勉強は全く無理だが、
しかしスポーツは得意で、体育だけは積極的に参加していた。

性格はまるで野良猫を人間にしたようなやつで、
とにかく自由奔放で、いつもふらふらとしている。

特に問題なのが、女遊びの激しさだったが、
それでもなぜか、女子からは圧倒的な人気を誇っていた。

(何故かこういう時期の女子は、少し悪っぽい男子を格好いいと思う傾向があるらしい。謎だ。)

対する俺、隆臣蘿蔔にしたところで、
身長も別に低い訳ではなく、顔も悪くはないらしいのだが、
それでも御李と比べると、あくまでも凡人の域にはまっていた。

人間とは生まれながらに不平等なのである。

そんなことを思いながらも、俺は未だに起きない御李の隣に腰を据えた。

今から2週間前。
まだ桜が咲きかけていた頃。

俺は、この赤毛の少年に出会った。