太陽が山並みに吸い込まれそうにうかんでいる。

「お日さまが山に埋まるよ、にいちゃん。」

まだ、四歳の市太が頬を真っ赤に染めて指差す。

反対側の小さな手は、僕のズボンをしっかり握りしめている。

「そうだね、じき暗くなる、早く帰ろう。」

山の中は、一気に暗くなる。

市太が恐がってグズらない内に帰らなければならない。

「にいちゃん、山に埋まったお日さまは、どうなるの?」

太陽は、山に埋まるのじゃあ無くて、地球が太陽の周りを回ってるんだよ。


でも、そんな事は、後で嫌になるほど教わる。

何だか太陽が山に埋まると言う市太の感覚の方が楽しい気がし始めた。



「そうだね、山に埋まったお日さまは、明日の種になるんだよ。」