「よっ!」

舞花の投げた石が緩やかなカーブを描き、川の中程に落下する。

ソフトボールでならした肩は中々の物だ。

川面が宝石をちりばめた様にキラキラと夕陽を反射している。

「なあ、東京の専門学校、決ったんだって。」

「うん、芳樹はT大学でしょっと。」

舞花は、もう一つ石を投げながら答えた。

「すっぽ抜けた。」

呟く舞花の目線は、先程より大きな山を描く放物線。

俺は、手元の石を拾い立ち上がる。

「変な感じだなっ。」

俺の投げた石は、低い軌道で川の中腹を軽く越える。

「まあねー。」

次に舞花の手を離れた石は足元に有る護岸のスロープと水面の境目に落下する。

キョポンと間の抜けた音がした。

舞花とは、幼稚園からずっと一緒だった。

「美容師、頑張れな。」

「うるさい、言われなくてもだっ。」

綺麗な放物線を描き飛ぶ石は、川に漂っていた流木にコンと当たる。

「うっし。」

こちらを振り返りガッツポーズの舞花。

「夏休みに帰って来たら、髪の毛切らせろ。」

「俺、坊主やめるつもりない。」

「けち。」

俺は、夏休みにはどれ位髪が伸びてるか、少し楽しみになった。