未だに、名前も知らない先輩が 私の事を知っている先輩が 私の心をかき乱した瞬間。 「それは無理」 「え…」 低くて聞き覚えのある声が 背中に飛んできた。 「し…翔先輩…」 階段を静かに下りてきて 私の隣に立ったのは 間違いなく… 私の好きな人。 な…なんで… 「達也、いい加減にしろよ」 「チッ…どんなタイミングで来んだよ」 達也って え…? 先輩何で居るの… 「あ~あ、翔も来ちゃったし俺は退散するわ。またな、夏歩!」 「…えっ…」 逃げるようにして 先輩はどこかへ消えて行った。