お店に帰り、最後のお客様を見送ると



「結維、今日は何だか上の空だったわね。どうしたの?」



真実さんが心配して聞いてきてくれた。



「いえ、別に。なんでもないですよ。」



何もないように振る舞い真実さんに言った。



「結維、恋でもしたか?」



螺旋階段の上から声がした。



「有兄…。」



有兄とは店長のこと。お店にいるときは店長って呼んでるけど、普段はこの呼び方。



もう閉店間近だからいっか。



「え、そうなの?」



「そんなんじゃないよ。真実姉も本気にしないで。」



店では真実さんだけど普段はこう。



私たちは実は幼なじみなのです。2人はあたしより4歳年上。昔から一緒に遊んでもらった。



2人が花屋をするって言ったときも、絶対あたしも一緒にやろうと思ってここに来た。



で、今は店の二階に住んでる。2人が部屋を一つ貸してくれてるの。



「恋かぁ…とうとう結維もそんな年になったのねぇ。」



うんうんと頷きながらあたしを見る真実姉。



「だから、そんなんじゃないってば!」



「おい、真実。ジャレ合いが終わったら明日の予定の打ち合わせ。」



有兄が何やら書類を持って部屋に入っていった。



「はーい。…結維、ホントに恋とかならあたし相談に乗るからね。」



真実姉は優しく微笑むと二階へあがっていった。