こんなに忙しいけど、全く苦にならない。



大好きな花の手入れをしたりする時間は私にとって安らぎの時間なのだ。



気分が良くて鼻歌を歌いながら花達を見ていると



「綺麗な花達ですね。」



「えっ?」



後ろから急に声がして、驚いて振り向くと、そこにはスーツを来たサラリーマン風の若い男性が立っていた。



「きっとあなたの手入れのおかげなのでしょう。」



男性は微笑みながら花を見た。



「いえ、そんな。私ではなくて先輩のおかげです。」



「そうなんですか。それにしてもここのお店の雰囲気はとてもいいですね。つい寄ってしまいました。」



男性は笑いながら私に話して来た。



とても、柔らかい笑顔で優しい印象を与える人。でもどこか頼りになるりりしい感じももった顔をした人だった。



「それはありがとうございます!いつでもいらして下さいね。」



「そうさせてもらうよ。じゃぁ今日はこの花を一輪頂いていこうかな。」



彼が手にしたのはアガパンサスの花。ユリ科の花であたしも好きな花。



「色がとても綺麗だ。部屋に飾りたい。」



花を眺めながら彼は言った。



「部屋に飾るんですか?」



「え…はい。おかしいですか?」



「あ、いえ!ただ一輪買うとおっしゃったので誰か恋人にでも送るのかと…」



前に一度そういうお客様がいたことを思い出した。



「あいにく、そういう人はいません。まぁいても、一輪だけでは喜ばないでしょう。」



「そうなんですか。一輪だけでも私なら大喜びなんですけどね。」



「じゃぁ、お会計のほうをお願いします。」



彼は優しく微笑むと花を差し出した。



「あ、はい。」



私はつい話に夢中になりお会計のことをすっかり忘れていた。





「じゃぁ、また来ます。とても気に入りました。」



お会計を済ませ、彼を店の外へ送る。



「ありがとうございます!そう言って頂けるとみんな喜びます。是非また来て下さい。」