「刑事さん? どうかしました?」
「あ、いえっそれでその、博士、というのは……?」

頭を切り替えて姿勢を正した彼は、向かって左の男を見る。
まだ睨んでいる。
その細身の体を覆う白衣に眼鏡は、まさしく「博士」のイメージだ。

「そうです、私の雇い主の縞村寿郎(しまむら としろう)さんです。って、博士ぇ、自己紹介ぐらい自分でして下さいよぅ」
「ふん、璃々子くんが勝手に始めたんだろう。そもそも私は協力するとは一言も云っていない」
「でもぉ、警察に協力するのは市民の義務ですよ」
「……ならば君、鈴木君といったね。私は君の質問に答えよう。だが君も、私からの質問に答えて貰おう」

何故そんな考えになったのだ。鈴木刑事は良く分からなかったが、博士の異様な迫力に押されて頷いていた。

「わ、私で答えられる範囲なら……」
「よし、では先ず誰が警察に通報したのだ」

お前から先に質問するのか。鈴木刑事は思ったが、彼は流されやすい性格をしていた。