彼らの正面に腰を下ろした新米刑事の鈴木 遥也(すずき はるや)は、愛想笑いを張りつけながら、愛用の手帳を開いた。
が、そこから目のやり場が分からない。
向かいのソファには、男ならば豊かな胸元につい目が行ってしまう、ピンクのメイド服の美少女が愛らしい顔で、こちらをじっと見ているのである。
目が合えば顔が熱くなるのを感じて、思わず視線を逸らす。
と、今度は髪を白と黒に色分けた――まるで、白黒スイカだ――白衣の男が、物凄い勢いで自分を睨んでいる。
「ええーと、では繰り返しになるとは思いますが、もう一度発見当時の詳しいお話と、お二人の事についても少しお伺いしたいのですが……」
最終的に自分の手帳を見る事にした鈴木刑事は、おずおずと切り出した。
答えたのは美少女だ。
「私が買い物から帰ってきたら、博士が玄関脇で何か見てたんです。いっつも色んな事に無関心な博士だから、珍しいなぁと思って。で、何かと思ったら男の人が死んでてぇ」
「それは何時ごろですか? 大体で構いませんが……それと、すみません、お名前を……」
「あ、高嶺璃々子(たかみねりりこ)といいます。このお家の家政婦やってるんですぅ。……時間は、16時ごろ、かなぁ?」
あまりに下手すぎる質問の仕方に、内心自己嫌悪に陥っていた鈴木刑事。
しかし璃々子の笑顔の受け答えに、いつの間にか心臓が跳ね上がる。
可愛い。

