電話を切ると、夜道には沈黙が戻った。 点々と灯る街灯を抜けていく璃々子は、通話を切った後の携帯画面をじっと覗く。 そこには、バックライトに照らされた自身のプロフィールが表示されていた。 白い背景に黒い文字と、初期設定から変えられないままになっているそこには、電話番号やメールアドレスの他に重要な情報が、名前が映し出されている。 『鈴木ふみ子』 一番上に表示されたその五文字を、冷めた目で見下ろした彼女は、やがて無言で携帯電話を閉じた。 夜の街に、硬い靴音が反響していった。 終わり